boofoooohの日記

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よかった、あなたがいて

プリンスが死にました。

「死にました」って書くのもどうかな、と思いますが、「殿下が亡くなった」みたいな書き方も嫌だったので、逡巡して、事実だけ書いたらこうなりました。

今年になってから、誰かが死んだとかさよならだとか、そんな話ばかり書いていますが、偶然とはいえ、何かを失うことについて書くことが多いこの頃です。

プリンスは、「ビートに抱かれて(when doves cry)」のPVが大量に流れるのをリアルタイムで見ていて、何でこんな気持ち悪いのが売れてるんだろう…と思っていたのも束の間、次作の「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」を、世間と一緒になって待ち望むことになりました。

プリンスは、デビュー時からR&Bとしては成功を収めていたのを、本格的にポップミュージックシーンに進出すべく、作品的にも、レコード会社としても意欲的に売りに出したがゆえのブレイクだったということは、私がソウルミュージック聴くようになってから理解したことで、当時彼に最も魅かれた理由は、「売れている」からこその勢いだったと思います。

おそらく、今初めてアルバム「パープル・レイン」を聴いたとしたら、あまり良いなと思わないでしょう。プリンスの作品でCDで買い直したのは「サイン・オブ・ザ・タイムズ」だけです。良いか悪いか好みがルーツ寄りになってしまった私にとって、好きな曲はロックとクロスオーバーする以前の初期に集中しています。

しかし、だからこそ、ビルボードのトップ40に入るなら何でも聴いていた中学2年生のときに「パープル・レイン」が出たのは幸運でした。あのときの「わけわからんが凄いぞ」という雰囲気は、リアルタイムでなければ味わえないものだったでしょうから。そして、プリンスの魅力は、正にそのわけわからんが凄いとこにあるわけで、それを当時の感性は素直に受け入れられたのです。

それがあって、初期の作品も後期の作品も興味深く聴けるんだと思います。最も、最近の活動は全くフォローしてなくて、その死もそれほどショックではなかったですが、彼の偉大さにリアルタイムで触れられたことは、貴重な経験だったと思います。

 

 'i wanna be your lover' prince ずっとこの路線だったら出会わなかったかも

 

'mia bocca' jill jones 当時大好きだったこれもついでに

 

さて、話をちょっと戻らせてもらいます。誰かがいなくなることに思いをめぐらせていた今日この頃ですが、私の身近な人間が、ひと月ほど前にあやうく死にかけました。

私がその事故を知ったときは、頭蓋骨陥没と脳出血のため手術を受ける直前で、仕事で打合せに向う途中の私は、横断歩道と1ブロック歩く間、どうしようもなく涙が溢れました。

今はもう退院してるんですけどね。顔面の骨がバッキバキに割れた割には傷跡も少なく、拍子抜けするような治り具合で、とにかく首をやらなくて良かったなと思います。

事故直後は本当にショックで、とにかく生きていてほしいと願いました。最後に交わした言葉や食事をしたときの姿が浮かび、切なくなりました。最後に見かけたときに、声をかけなかったことが悔やまれてなりませんでした。

そして、命に別状はないと知って心が落着いたとき、当人が存在するということが、その日常が、如何に貴重であるかについて思いました。

失ってから嘆くのではなく、今いることについて思いを巡らせていなければ、と思うのは大抵失ってからで、そんなに大切にするような日常はそれはもう日常ではないわけで、でも、その存在を大事にしていたい。と、思ってふと浮かんだのが矢野顕子の曲でした。

 

「watching you」矢野顕子 収録のアルバム「welcome back」傑作です。

 

この曲の「あなた」は、寝食を共にするパートナーで、私の場合とはちょっと違うのですが、 日常の中に、ただ「あなた」がいることの喜びを、こんなにも愛情豊かに歌えるなんて、昔から好きな曲でしたが、改めて聴き直してああ素晴らしいなと思いました。

よかった、よかった…。失う前に思いたいものです。