boofoooohの日記

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ネオアコって何だ

先日、エヴリシング・バット・ザ・ガール(良ければこちらを)をネットで検索してて、「ネオアコギターポップ」みたいな表記を見つけてちょっと思うところがあったんで、その話をしたいと思います。

 

今回は、「ネオアコ」って何なんだって話です。今頃ネオアコについて語る人もいないでしょうから、張り切って書きたいと思います。

まず、言葉としての「ネオアコ」です。音楽用語として「ネオアコ」という言葉があるなら、その実体としての「ネオアコ」という音楽があるはずなんですが、そうじゃないんです。「ネオアコ」なんて音楽はないんです。今回のテーマは、「ネオアコ」という言葉がいかにテキトーに使われ、それが指していた音楽が愛されてきたか、です。

ネオアコ」は「ネオ・アコースティック」の略称なんですが、特定の音楽ジャンルではなく、もともとは「ネオ・アコースティック・ムーブメント」のように特定の時期の音楽的傾向を指すのに使われていました。特定の時期とは80年代初期から中期くらいまでで、パンクが一段落して、内省的な曲とサウンドを持ったバンドが出てきた頃です。

一般的に、ニューウェイブという言葉で括られてきたこれらのバンドのなかで、簡素なアレンジながらも印象的な音楽を演っている新しいバンドを売り込もうとして、日本の音楽業界が勝手に名付けたのが「ネオアコ」です。エヴリシング・バット・ザ・ガールの2枚目のアルバムのライナーには、やたら「アコースティック」という言葉が出てくるんですが、日本人は「アコースティック」に弱いんですかね。何か本物っぽいというか、自然主義というか、ミニマムというか、エコな無印良品的イメージにビビッと来る人が多いんでしょう。

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everything but the girl 'love not money' 貶す人いるけど分かってないなー。

 

フォークギターというより、アコースティックギターって言う方が何かカッコいいじゃないですか。でもそもそも「アクースティック」ですからね、読み方としては。ピーター・バラカンが言ってましたし、エドウィン・コリンズも「ネオアキ」って言ってました。

「ネオ」なんですが、当時ネオ・アカデミズムなんてのもあったりして、「ニュー」とか使うよりオシャレな感じがしたんでしょう。新しいアコースティックって何なんだよ、そもそもオリジナルのアコースティック・ムーブメントなんてあったのかよ、なんて真面目に考えてはいけません。パンク以降、俺もやったるでとばかりにイギリスで新興レーベルがポコポコ作られ、そうしたラフトレードやチェリーレッドなんかのバンドも日本でリリースされるようになり、所属する新しいバンドを紹介する必要があったのが背景にあると思います。こうしてEBTG擁するチェリーレッド・レーベル(EBTGはチェリーレッドとラフトレードが作ったブランコ・イ・ネグロですが)のバンドや、アズテック・カメラやプリファブ・スプラウト(キッチンウェア!)といったバンドが「ネオアコ」という言葉に括られることになります。

 

grab grab the haddock 'i'm used now' かわいい。

 

aztec camera 'oblivious' 結局これがネオアコってみんなの頭にあると思うんですけど。

 

 prefab sprout 'cruel' ああプリファブはどれにするか本当に悩んだ。去年出たアルバムもよろしくです。

 

80年代後半には、そんな「ネオアコ」もすっかり忘れられてしまうんですが、一部の熱心なイギリスのインディーズ系の音楽ファンには、「ネオアコ」はしっかり刷り込まれたようです。ちょっと実家に帰らないと確認できないですが、この時期でも洋楽雑誌の輸入盤屋(VINYL)の広告には「ネオアコ」が使われてました。ペイル・ファウンテンズやロータス・イーターズなんかは、「青春ネオアコ」ってなってたような…。こういった既に解散してしまった、日本ではあまり売れなかったバンドの中から、輸入盤屋に集う人たちがネオアコ認定して再評価していたように思います。

そして、「ネオアコ」が一般的になったのは、なんといっても90年代初めのフリッパーズ・ギターのブレイクからでしょう。彼らは正に前述の輸入盤屋に集う人たちであり、彼ら自身良く使ってました。彼らの功績であるオレンジ・ジュースの再発に当たっては、オレンジ・ジュースを偉大なネオアコ・バンドとして位置付けているんですが、それ以前からもその他の「ネオアコ」バンドとともに紹介していました。そして、それが広まっていったというわけです。

 

フリッパーズ・ギター「フレンズ・アゲイン」 その功績を讃えてオレンジ・ジュースと並べてあげよう。

 

 orange juice 'felicity' 'falling and laughing'の歌詞がこれぞネオアコってフリッパーズ言ってたけど、それってつまり青春?

 

つまり、ある意味フリッパーズ・ギター(とその周辺の人たち)が、何が「ネオアコ」であるかという基準を作ったとも言えます。オレンジ・ジュースの日本盤CDには、ネオアコ通信というバイヤーズ・ガイドが付いてました。

バイヤーズ・ガイドに載ったバンドを見ると、ハードロックとは対極的な静かな、そして音数の少ないサウンド、60年代回帰的なメロディアスな曲調、何か知的な佇まいを感じるルックスやレコードジャケットといった特徴が挙げられます。

まあ正直いってあんま売れなさそうな人たちですけどね。大体がインディーズだし。でもそこがいいんです。音数が少なくてミニマムなのは、楽器を買う金も、テクも音楽的な知識もなかったからで、そういうとこはパンクと一緒なんですが、いわゆる3コードのパンクよりももっと音楽的なことを目指そうとしていて、それが同じような境遇の日本の若いリスナーの心に響いたんだと思います。

なので一聴して全然違うタイプの、時代も違うモノクロームセットやヤング・マーブル・ジャイアンツやパステルズなんかも「ネオアコ」に平然と括られてしまうわけです。本国では「インディポップ」という括りで、「アコースティック」なんてのとは無縁な「ジャングリー(ギターをジャカジャカさせるようなプレイスタイル)」という直接的な表現をしたりしているんですが、そういうのを知った上で、それでも「ネオアコ」という呼称を使い続けるわけです。演る方ではなく、聴く方がそれと思って当てはめる音楽スタイルが「ネオアコ」ということなんでしょう。だから人によって「ネオアコ」の定義が違っていて、ネットで調べるとその辺が良く分かると思います。

 

monochrome set 'jacob's ladder' 怪しいなー。

 

young marble giants 'colossal youth' どうしたらこれとアズカメが…。

 

 pastels 'something's going on' これもまた一つのジャンルですよね。

 

私も「ネオアコ」好きで、CDの収納は別にしてあったりするんですが、80年代にデビューしたバンド(例外トラッシュ・キャン・シナトラス)までですかね。スミスは入れてません。多分、誰もが納得するのはアズテック・カメラとペイル・ファウンテンズなんじゃないでしょうか。

ネオアコ」かどうかなんてのは、とうの昔に気にならなくなりましたが、今でもその別にしてあるCDを見てると、特別な気持ちが湧いてきます。

 

 pale fountains 'palm of my hand' 青春は一度だけ!

 

 

 

f:id:boofooooh:20150222210435j:plain ギターポップについても書きました。良ければこちらを(→じゃギターポップて何だ )。

f:id:boofooooh:20150412161601j:plain我が青春のバンド、ブリッジについてです。良ければどうぞ。さあどうぞ。(→回想のブリッジ(上) (下) 

f:id:boofooooh:20160605213004j:plain フリッパーズ・ギターは後期ですがこちら(→フリッパーズ・ギター「ゴーイング・ゼロ」を聴き直す