回想のブリッジ(下)
さて、前回の続きです。今回は勢い余って解散に至るまでを書きます。
前回けなした1stアルバムですが、面白いことに歌詞がカタカナで載っていました。何語で歌ってるか分からない、と書きましたが、初期は英語だったんです。多分、そういう声があったのと、日本語で歌えというプレッシャーに反発したのかもしれません。フリッパーズもそうだったんですが、洋楽に強く影響を受けたバンドは、英語で歌ってた頃でした。でも売れないですよね、洋楽好きな層にしか。それと、ネイティブならともかく、フリッパーズも英語がおかしいと指摘されて日本語にしたように、日本のバンドなら日本語で歌えばいいのにと私は思ってました。
友人である小山田圭吾が主宰するレーベルからとはいえ、メジャーからデビューしたのにアマチュア指向だなあ、まあそれも魅力の一つと思っていたんですが、93年の夏、一皮剥けたシングルを出します。
bridge 'waltermelon bikini'
これはいい!これまでの良さを保ちつつも、もっと広い層にウケそうなわかりやすさ。バカバカしくもオシャレになってる日本語詞のバランスの良さ。キャッチーなイントロ。後にカジ君が切り開いていく路線ですが、「チャチャ、チャチャチャ」と歌う大友さんに、遂に本気になったと思いました。
カップリング曲も良い出来で、特に「splash」は、自らボーカルを取る清水君のこれまた力作で、ギターソロはブリッジでのベストといってもいいんじゃないでしょうか。レベルが上がった。これからどんな曲を聴かせくれるんだろうと、ワクワクしました。これがピークになるとも知らずに。
その年の秋、ホーン隊を入れた法政大学でのライブは、しかし、その「splash」がやけに感傷的に聴こえました。充実しているはずのバンドなのに、なぜか少し寂しさを感じたのは夏が終わったせいだからかなと思ったのですが、このときにはバンドの解体は始まってたんでしょう。
とはいえ、CMタイアップでフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」をカバーし、一見派手に活動しているようではありました。今さらそれはちょっと…の感はありましたが。続くシングル「salt water taffy」の「spoonful of mind」はなかなか良い曲で、地味ながら堅実なリズムギターを弾いていた大橋君の、曲作りの才能が垣間見えました。
にもかかわらず、ブリッジの活動はそれ以降停滞し始めます。94年の夏にほぼ日本語詞の2ndアルバムを出すんですが、ライブはやってなかったです。アルバムの作詞作曲クレジットからは大友さんの名前が消え、カジ君と大橋君の名前で占められていました。
その2ndは悪くはないがちょっと期待外れ、というのが正直なところでした。いい曲もあるんですが、ちょっと印象薄い曲や、日本語の詞が上手く乗っていないところが気になったりとか。それでも同時期にやったライブでは元気な姿を見せ、すでにフロントマンとなっていたカジ君がMC喋る喋る。シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーの日暮さんをコーラスに迎え、大いに盛り上がりました。
ということでそのライブがこれでした。pt1は(上)に。
その後は…クリスマスにライブやっただけでしたかね。年が変わり、月日が経ち、その日がやってきました。
ああやっぱりな、そう思いました。
ラストライブは、長めにやってくれましたが、メンバーの思いがバラバラなのが何となく伝わってきました。清水君のプレーがちょっとやる気なかった気もします。ほかのメンバーは淡々と、涙を見せることもなく、最後は初期の名曲「sweet bells for…」で終わりました。
解散はバンドのバランスが崩れたからなのだと思いますが、日本語詞の問題が大きかったかなと思います。大友さんは日本語で書きたくなかったか書けなかったのか。彼女の詞は当時流行っていたカラックスの映画(「motorcycle angel」は「汚れた血」で、「on the bridge」は「ポンヌフ」ですよね)なんかを題材に、恋愛についてのものが多かったと思いますが、それは日本語詞で描く世界ではなかったのかもしれません。そして彼女の曲は英語詞と不可分だったのかもしれません。
彼女は最初ソバージュで、確かギター抱えて歌ってたんですよね。割と初期に髪切って、タンバリン持つ姿になったと思いますが。彼女の地声は歌と違って、低めの落着いた声をしていました。はにかんだような困ったような、なんかいつも口をへの字にしてた印象があるんですが、不思議な魅力のある人でした。
池水さんはCDのジャケットではニコニコしてる姿が多いですが、最初はライブ前にタバコをスパーっと気怠げに吸ってて、バーのママみたいだと思って近寄り難かったです。でも、ライブ後に「デモテープ買ってくれい」と客に声をかける姿を見てから親しみを覚えるようになりました。アンケートやDMのイラストは彼女が描いてたんですよね。
デモデープはvol.IIIまで。vol.Iを買い逃して大変悔やみました。何が入ってたんだろう。
カジ君のベースが最初タカミネのアップライト型のフレットレスベースだったこと、コピーしようとしてずっと見ていた清水君の左手、ヴァイオリン奏者の中西俊博がライブにゲストで出てきたこと、「what goes on」ていうベルベットっぽい曲もやってたけど、スティービー・ワンダーの'love a go go'とかスライ&ファミリーストーンの'running away'とかソウルの曲もやってたこと…。
今回ブリッジのことを書くにあたって、DMとかデモテープとかチラシとかライブを録音したものとか久しぶりに引っ張り出して、色々思い出して、涙が出そうになりました。音楽だけではなく、その音楽と共に過ごした日々が、なのかもしれませんが、今でも心に刺さるバンドです。
最後のDM。こちらこそ本当にありがとう。
良ければこちらも。