nora germain 'little dipper'を聴く
ヴァイオリンっていいですよね。弾いたことないけど。アレ、小っちゃいくせに相当デカい音が出るじゃないですか。しかもフレットレスだし。弾けるとカッコ良いですよね。
クラシックのイメージの強い楽器ですが、ポップミュージックにも使われていて、カントリーで使われるときはフィドルって呼ばれてますよね。大草原の小さな家で父さんが弾くあれですよ。
ヴァイオリン使われてるっていうとディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」とか頭に浮かびますが、ブルーベルズの「ヤング・アット・ハート」も印象的でした。
ギャラの少なさにブルーベルズとは裁判沙汰になったようで…。
この、いかにもインチキ臭い芸人風情でヴァイオリンを弾いてるのはボビー・ヴァレンティノで、彼は80年代初めに色んなバンド(スタカン、ニック・ロウも)にゲストで弾いてたんですが、91年にソロで出したアルバムが良かったんですよ。
bobby valentino 'the man who invented jazz'
当時アシッド・ジャズ全盛だったんですが、違和感ないというか、こっちのがカッコ良かったですね。私にとってヴァイオリンは、チャールズ・インガルス→ボビー・ヴァレンティノの楽器と認識が変わり、そのうちステファン・グラッペリを知りました。
ボリューム上げてください。
このスイング感。テンポアップするときがカッコ良い。そして実に表情豊か。ステファン・グラッペリはジャンゴ・ラインハルトと組んで世に出て、97年に亡くなるまで現役であり続けたジャズ・ヴァイオリニストの第一人者です。そして、彼を敬愛し、この度アルバムデビューした若いヴァイオリニストをご紹介します。
ノラ・ジャーメインは、今年南カルフォルニア大学のソーントン音楽学校を卒業したヴァイオリニストで、今年に入ってからすでに数曲入りのEPを2作出しています。
その2作は、ダブル・ベースとギターのトリオ編成で、いかにもジャズ・ヴァイオリンといった小気味の良い作品でした。
nora germain 'generation gap'
そして、先日リリースされたアルバム'little dipper'は、ピアノ、ドラムを加え、そして意外にも彼女自身のボーカル曲を含む、ちょっとポップ寄りな印象でした。
おや、これは…と思ったんですが、冒頭を飾る、スイング感溢れるその名も'swing is fun'が彼女の作曲によるものなので、おそらくプレイヤーとしてだけでなく、このアルバムを自身の作品として世に問う気持ちが強いのかなと。そしてポピュラリティを獲得するために、あえてボーカル曲も入れたんじゃないですかね。
私も大好きなトミー・エマニュエルに捧げる'tommy'がボーナス・トラックとして入ってるんですが、これ、動画でソロで弾いてるのをアップしたバージョンが荒削りでグルーブがあって良かったんですよ。もっとこんな感じでいってほしいなというのが私の希望ではあるんですが。
'swing is fun'みたいに全編軽やかに弾きまくるような作品も出してほしいのですが、6曲目の'salty dog'なんてちょっとひねたリズムで始まる面白い曲もあるし、ただのステファン・グラッペリ好きなヴァイオリン弾きではない、彼女の今後の展開が楽しみです。
ところで彼女を知ったのは、トミー・エマニュエルと上でステファン・グラッペリとも共演してるマーティン・テイラーの動画をリツイートしたのがきっかけだったんですが、リプするとちゃんと反応してくれるんですよ。まめに営業してるなあ。ということで興味を惹かれた方、アマゾンでもiTunesでも買えるんでよろしくです。