ジャック・ロンドン「火を熾す」を読む
残念でしたね、日本代表。コロンビア戦は、前半までは良かったんですけど。
フットサルだとあれくらいの密集の中で、いかにスペースを作り活かすかということをやっていくんですが、そういう目で見ると、もっと前線で動きがあっても良かったのかなとか、スペースを狙って押し上げてくる選手に、もっといいタイミングで出せないのかなとか思ったりもしましたが、それをさせないコロンビアのディフェンスが良かったのでしょう。
ゴール前でボールが繋がる良い場面もありましたけどね。しっかり守られました。あと、クロスを上げてもその後どうするのか見えなかったり…と言ってもまあ仕方ないですね。コロンビアの選手のキビキビした動きに感心しました。動き出し、ボールを受けるときの体の向き、受けてからの速さなどなど。見習いたいです。
さて、暑いブラジルの熱い戦いから、寒くて身が切られるような話です。
怖くてなかなか読めませんでした。
表題作は、舞台がユーコン川っていうからアラスカなんですかね、マイナス45度の雪原で濡れてしまった足を乾かすために、焚き火を起こす男の話です。男は犬1匹と仲間の野営地を目指して歩いているんですが、なぜそうなったかという説明はありません。動いていないと凍え死んでしまう世界で、身体の末端から凍り付いていく様を、男の心理状態を交えて淡々と、その分迫力をもって描写しています。
男は最後まで冷静になって絶望と戦いながら、消えてしまった火を再び付けようとします。指が動かなくなってマッチが擦れなくなっても。極寒の大自然の中で、男のささやかな抵抗とその末路が描かれます。
ジャック・ロンドンは20世紀初めに売れっ子だったアメリカの作家です。幼少からの極貧状態を経て、やがて作品が認められるようになり、数多くの作品を残しています。
密猟したり、アザラシ狩りの船員したりとアクティブな生活をしてたんですが、アラスカで1年半金探しをしていて、表題作はその経験が活かされているのでしょう。読んでて辛くなってくるくらいの設定と描写ですよ。
この本は彼の短編の中から9本、柴田元幸が選んで訳したものです。冒頭の表題作に続くのは、革命を志すメキシコ人ボクサーの話。ジャック・ロンドンは社会党の党員でもありました。観客から何から全て自分の敵である会場で、銃の調達に必要な5000ドルのために戦います。
ボクサーの話はもう1編載っていて、新進気鋭のボクサーと戦う老ボクサーの話なんですが、これも良かったです。ジャック・ロンドンの語り口はいたってシンプルに、主人公が苦闘する様を描き、その力強さに感銘を受けます。
かと思えばSFみたいな作品があったり、この本には載ってないですが、ミステリーも書いていたりとその作風は幅広いです。
でも絶望の中で人は何を思い何をするのかが、彼の大きなテーマだと思うんですよね。ということで、表題作読んで寒い思いをしたり、日本代表に思いを馳せたりしてみてください。