boofoooohの日記

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虚言と嫉妬 宮沢賢治「土神と狐」を読む

ご無沙汰してました。忙しかったんですけど、次は音楽かサッカーかと思ってたら良いネタがなくて、ズルズルときてしまいました…。気づいたらまた狐の本です。

 

先日、SNSでは華やかな生活を装っていた女性が、オークション詐欺で捕まった無職の女性なんじゃないかというニュースが話題になりましたね。年収3000万円という触込みで、ブランドバッグやら高いお店やら旅行の写真をアップして人気だったらしいんですが、実際は地方の国立大を卒業して地元に就職し、それから東京に出てきてOLをしていたようです。華やかな生活は、かなり「盛った」もののようでした。

その記事に何気なく辿り着いて興味を持ち、彼女のツイートを見たりするうちに、私の大好きな、ある作品を思い出しました。宮沢賢治の作品です。

 

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宮沢賢治作・大畑いくの画「土神ときつね」 私は全集で読みましたが絵が気に入ったので。

 

樺の木を巡る土神と狐の三角関係の話です。樺の木が女性で、容姿端麗です。土神はワイルドで、ホームレスのおじさんみたいななりをしています。狐はお洒落でインテリで優しいので、樺の木は狐に好意を持っています。それに土神は嫉妬して、じったんばったんしてウォーッと叫びます。

土神いいヤツなんですが、樺の木を怖がらせちゃうくらい、不器用で乱暴者なんですよ。一方、狐は樺の木に、天文学や美学の話をして感心させたり、ハイネの詩集を貸してあげたりします。土神は、外国から取り寄せた望遠鏡が届いたら見せてあげる、なんて話してるのを立ち聞きして、耳を塞いで一目散に駆け出したりします。

ですが、この望遠鏡、狐の嘘なんですよ。狐は思わず見栄を張ってしまったことを後悔するんですが、樺の木を喜ばせるためだと自分を納得させて、嘘をつき続けます。樺の木にさぞや本がいっぱいあるのではと尋ねられ、日本語や英語、ドイツ語のもありますと、答えてしまいます。

で、ある日土神と狐が樺の木のところで鉢合わせたときに、土神は我慢ができなくなって、何が望遠鏡だ美学の本だと狐を追いかけます。狐は逃げますが、自分の穴の手前で追い付かれ、土神にひねり殺されます。

狐の穴に踏み入った土神の見たものは、赤土が固められただけの、なにもない穴でした。狐のレインコートのポケットに入っていたのは、鴨茅の穂が2本だけでした。土神は途方にくれてから、号泣します。

土神と同様に哀れな存在だったのに、土神に殺されてしまう狐に、私はかなり同情しました。見栄を張っていた姿も。(私の実家が貧乏だったからかもしれませんが。)狐は殺されたときに口が曲がり、まるで笑っているかのようで、この暗示的な結末も印象的でしたが、 私は狐の真の姿が明らかになるさまに、(事情はかなり違いますが)ごんぎつねを思い出しました。

 

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カモガヤ フランスのウィキペディアから

 

狐の悲劇は、その何もなかった狐の穴のイメージの強烈さもあって心を揺さぶられましたが、今回の事件はちょっと寂しいというか虚しいというか。ネット上での生活や人格は、それが現実の世界とリンクしなきゃただの幻想ですから、やる方も見る方も、そんなに一生懸命にならなくてもいいんじゃないかなと。たまにはSNSやめて、本でも読みましょう。

 

pretenders 'don't get me wrong'