ソウル・ミュージックを学ぶ
あけましておめでとうございます。
というより明日から仕事なんで全然めでたい気分じゃないですね…。連休の最終日をいかがお過ごしですか?とりあえず今年もよろしくお願いします。
私は年末にひいた風邪をずっと引き摺ってしまったおかげで、ためこんだ本やら映画やらを消費することができました。そこで思ったことをひとつ。
ジェリー・ウェクスラーの「私はリズム&ブルースを創った」を読んだんですよ。ジェリー・ウェクスラーは、アトランティック・レコードというアメリカのレコード会社の経営者で数々の素晴らしいレコードのプロデューサーだったんですが、その彼の自伝です。
ジェリー・ウェクスラーのモーレツぶりが激しく伝わってくる!
アトランティックの本といえば、同じく経営者だったアーメット・アーティガンを中心に描いた「アトランティック・レコード物語」も面白い本でした。アトランティックはリズム&ブルース専門だったのが、次第にストーンズやツェッペリン等を手がけるようになっていくのですが、どちらの本も印象に残るのは、50年代から60年代にかけて、レイ・チャールズ、ドリフターズ、アレサ・フランクリン、オーティス・レディングが登場し、アトランティックに素晴らしい録音を残す時代の話でしょう。特にソウル好きの人にとっては。
私も好きなんで、このタイトルでこの著者の自伝なんで手に取って、大変面白かったわけですが、たまたまそのとき映画の「ブルース・ブラザース」がhuluにあるのを発見して、並行して喜んで観ててですね、そういえば自分はどうしていわゆるソウル・ミュージックを聴くようになったのか、ふと思ったんですよ。
しかしほかに観なきゃいけないもんが溜まってるのになぜまた観てしまうのか…。
なぜかというと、「ブルース・ブラザース」を最初観たときはあんま面白くなかったんですね。中学1年生だったでしょうか、テレビで観て。それはこの映画がソウル・ミュージックへの深い愛が込められていたにもかかわらず、好きじゃなかったんです。その手の音楽が。
当時私は年齢相応に、カッコ良さげなPVの、ニューウェイブのバンドやらトップ40ものやらの流行りの音楽を聴いてたわけです。楽器が上手いとかよりも、斬新かどうかが重要で、そのためにはむしろ楽器が下手な方がいいくらいに思ってました。パンクやイギリスのインディーズ系の音楽が好きだった人は、そういう傾向が強いんじゃないでしょうか。
一方でアメリカのメインストリームの音楽はハードロックのバンドが幅を利かせ、ライオネル・リッチーが全盛で、マイコーはスリラーの頃でした。古き良きソウル・ミュージックはそれ以前からディスコミュージックに押されてしまったんですが、ディスコが下火になってからも再評価されることなく、アレサなんかの大御所も時代に合わせようとして、逆に場違いな感じになってました。
もう数年経つと、CD化による名盤復活と、ヒップホップの隆盛と連動してレア・グルーヴが流行って昔のソウル・ミュージックが再評価されるんですけどね。80年代前半のこの時期が、ソウルを含め70年代以前の音楽が最も評価されていなかったように思います。長髪(アフロ含む)、ベルボトム、デカいサングラスが最も格好悪かった時代といいましょうか。
しかしですね、ミュージシャンのインタビューを読んだり、音楽雑誌の記事を読んだりすると、次第にそのルーツであるR&Bやブルースに対する敬意に感化されるようになってくるんですね。そしてミュージシャン以上に日本でその影響が大きかったのは、ピーター・バラカンだったと思います。
彼は一方で「ポッパーズMTV」という最近の音楽のPVを流す番組をやりつつ、一方でその番組内や自分のラジオ番組で古今のソウル・ミュージックを地道に紹介し続けました。前述したような溝ができた、日本におけるニューウェイブ好きとソウル・ミュージックの架け橋的な存在だったといってもいいくらいです。
その試みが成果物となったのが、「魂のゆくえ」です。
新潮文庫版の方が装丁好きだったな…。
素人に分かりやすく、かつ網羅的に書かれたソウル・ミュージック入門の好書です。ここから何枚のCDを買ったことか。前述のアトランティックのCDもこれから買いました。ピーター・バラカンが良いって言ってんだから聴いてみるか、といった信頼感の後押しもあって。
ということでようやくその格好良さが分かってきて、改めて観た「ブルース・ブラザース」の素晴らしさを理解できるようになったんですが、ここに至るまでに、どうしてこんな時間がかかったのか、それが引っかかるんですね。
ロックは最初から好きで、そのルーツ・ミュージックじゃないですか、ブルースやR&Bは。お前の感性が鈍いからだと言われればそれまでなんですが、私と同じような境遇の人結構いると思うんですよ。
時代的にニューウェイブ全盛の頃に洋楽を聴き始めて、それが基準になったからだと思います。パンク・ニューウェイブは70年代のロックに対する反動だったんですが、一部スカやレゲエ、モッズ経由でのソウルへの接近はあったものの、ルーツに回帰しようとはしませんでした(でもそこが良かったんですよ)。よって、ロック、パンク・ニューウェイブという2つのクッションに挟まれて、ソウルの良さが分かりづらくなったのではないでしょうか。
本国アメリカなんて過去は振り返らないですからね。私が高校生のときは若者はヘビメタかラップ、R&Bチャートはブラコンが主流で、ルーツに遡ろうなんて気にはなりづらかったです。ヒップホップのおかげで昔のソウルのレコードの再評価に繋がっていく過程ではあったんですが。
なにより、ニューウェイブ好きはジーッと音楽聴くのもあるかなと。下手すると正座したり、膝を抱えながら聴いたりして…。だって、ディスコって凄くダサく見えたんですよ。
音楽聴いて踊るって感覚がないと、ソウルの良さは分からないですよね。個人的にはギターを弾くようになって、リズムに対して意識的になったことで、この辺変わっていけたのもあると思います。レア・グルーヴ以降の世代の人たちはその点いいですよね。
踊れる音楽の素晴らしさを、お勉強しないと分からないというのはおかしなものですが、音楽聴くってそういうことも必要なんだと思います。この映画も、すでにソウル・ミュージックが衰退した時代の話で、バンド仲間も足洗ったりしてるんですが、ゴスペル、カントリー、ブルース、R&Bと、ソウル・ミュージックのルーツを辿っていきつつ、最後はステージでみんなを踊らすという筋が分かるようになると俄然面白くなるんで、未見の方は観たり聴いたりして楽しんでください。
ということでソウル・ミュージックとブルース・ブラザースの素晴らしさが良く分かる動画をご紹介。まずは映画のシーン。歌うはレイ・チャールズ。
'thinking 'bout something' hanson そして愛溢れるパロディ演じるは、キミは憶えているか!'mmmbop'のハンソン。カッコいい!