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boofoooohの日記

サッカー/音楽/本/大人になってからのフットサル

物語を輝かせるもの キリンジ「悪玉」と口ロロ「TONIGHT」を聴く

音楽

梅雨が間近いようですが、良く晴れた先週末は公園まで走りに行って、ひっくり返るための木陰を探してふと上を向いたときに、それは桜の樹だったんですが、たわわに実がなってたんですね。サクランボとは違うスリムなシルエットですが、ダークチェリーと同じ色したその実がとても美味しそうで、直感的にこれは喰える!と思い、若干の不安を覚えつつ、水道の水で洗って食べました。美味しかったです。

 

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後日写真撮りに行きました。収穫してる人がいました。

 

思わぬ味覚に喜んでいると、スズカケノキの果実は食えない、というキリンジ兄(当時)の歌詞が思い出されたんですが、ついでに思い出した私の好きな曲についてお話ししようと思います。

 

キリンジの「悪玉」(と書いてヒールと読むぜ)は、兄弟での旧キリンジ最後のライブで最後に演奏した曲です。人を食ったような、そしてなぜか癖になるような曲調もさることながら、プロレスのヒール役という題材がいかにもキリンジらしく、きっと好きな人が多いことと思います。

 

 さあみなさんご一緒に!

 

「破壊の神シヴァよ血の雨を降らせ給うれ」「マイク寄こせ早く」といったポップソングらしくないフレーズが散りばめられていますが、言葉の意味に反して、独白調に地味に歌われ、なんてヒネたキリンジ兄(当時)らしい曲だと思うわけですが、この曲の歌われている世界、随分浪花節じゃないでしょうか。

虐げられた二流のレスラーが、自由を求め、息子の笑顔を求め、悪役という役割を放棄し、勝利する…。ヒネてない。ヒネてないですよね。プロモーターが席を立ち、罵声が渦巻く中に息子の無垢なる笑顔を見出だすラスト。ダメ親父が子供に良いとこ見せたいがために頑張る姿は映画「チャンプ」のような、普通に感動的な物語のようです。

それはそれで面白いどんでん返しなんですが、何か普通じゃないかとも思うわけです。でもそこはさすがキリンジで、「マイク寄こせ早く」が、最後にもう一度出てくるところで、このクライマックスがしがないレスラーの夢想であることを暗示します。そのための独白調、そのための物憂げな曲調だったのかと気付かせます。

しかし、曲は「無垢なる笑顔」に向けて、微妙ですが確かに盛り上がっていきます。夢想であるにせよ、いやむしろだからこそ、その世界が輝かしいものとして描かれていて、それがこの曲の魅力なんだと思います。

 

もう1曲、普通の感動的な物語が素晴らしく感動的になっている曲をご紹介します。

 

口ロロ 「TONIGHT」 大木さんの声が好きでした。

 

確かなポップセンスをベースにしつつも、そのスタイルはさまざまに変化する口ロロですが、私は初期のバンドっぽかった頃が好きです。といっても知ったのはデビューから大分経った頃で、「このファンファーレというアルバムはなかなかいいなあ」などと思っていたら、この曲が出て衝撃を受けました。

生きるのが辛くなった若者が自殺をするんですが、思い直して生き返ろうとする様を描いています。こう書くとありふれた題材なんですが、「死んでみた」で始まる歌は、ポップソングとしてはなかなかないでしょう。

そして壮大なオーケストラ風アレンジが縦横無尽な感じで先が読めず、ただ、「どうなるんだろう」と思いつつ聴いていると、最後には非常にポジティブな気持ちになっています。そうだ俺もまだルーレットでゴレイロかわしてゴールしたことないし、試合でエラシコ使ったことないし、キリンジNHKホールライブのブルーレイ未だに観てないし、エロ動画も消してねえしっていうか消したくねえし。死にたくない。

自殺した彼が三途の川で聞く話は、どれも陳腐といってもいい内容で、君は?と問い返されて思い直すのもどうなんだよと思いますが、口ロロは曲のパワーで圧倒することで説得力を持たせます。そして、ボーカルの声、キレの良さ、メロディで聞き手にシンパシーを抱かせ、2回目のサビで「さよならTONIGHT」が「さよならじゃない」に変わるところが凄く感動的に聴こえます。帰ってみんなにキスしたい、そんな気持ちにさせます。

 

ということで、音楽っていいなあという身も蓋もない感想も、こうした曲を聴くと改めて納得していただけるのではないでしょうか。