boofoooohの日記

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ヴェルディは嫌いですか

ちょっと前に、ヴェルディからU-21代表の中島翔哉FC東京に移籍したというニュースが話題になりました。彼は、ジュニアユースの頃からヴェルディに在籍していた、いわゆる生え抜きで、年代別の10番背負ってるわけですから、低迷するチームにとっては宝物のようなものです。

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ヴェルディというと、母体が読売だったということもあって、「野球」「ナベツネ」なイメージがつきまとい、特に今はフロンターレサポになってる川崎市民にとっては、川崎を見捨てて東京に行ったチームとして、嫌ってる人も多いんじゃないでしょうか。

正直言って私も以前はそうでして、昔だったらこのニュース聞いて喜んだかもしれません。でもこの本読んで、ちょっとヴェルディに対する考えが変わったんですよ。

 

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「異端者たちのセンターサークル」海江田哲郎

 

ヴェルディは、Jに輩出した人数は3桁を超え、J2で苦戦するトップチームとは対照的に、ユースチームは未だ全国屈指の強豪であり、育成については評価が高いです。この本は、そんなヴェルディの育成について、その歴史を紐解きながら、指導者の声を拾っていきます。

ヴェルディは1969年に、「読売サッカークラブ」という名称で、実業団が中心だった日本サッカー界初のクラブチームとして誕生します。全面芝生のグラウンドを複数備え、ヨーロッパのクラブを範とし、将来のプロ化を見据えた画期的なチームでした。

今となっては当たり前ですけどね。当初は周りから大分色眼鏡で見られたようなんですが、そうした視線を見返すかのごとく、門戸を広げて人を集める一方で、ヴェルディらしさを追求するようになります。

このヴェルディらしさについては、指導者それぞれ表現が違っていて、はっきりこれだというようには書けないんですが、戦術的にはヨーロッパのトップクラブにも負けないような高い技術力をベースに、蹴るべきとき、ところに蹴り、相手を崩していくスタイルのこと指しているようです。

そして、ジュニアの子(都並とか)何人かが、休日にトップチームの選手1人に挑戦して、本気で打ち負かされるエピソードが出てくるんですが、こうした個の勝負へのこだわりや、サッカーが好きだということで繋がる、世代間の風通しの良さが随所に出てきます。

また、技術力が一番の評価基準になるんで、「巧さ至上主義」みたいになってて、挨拶しない、唾吐くわ審判に文句言うわで他のチームから嫌われるエピソードが出てきたりして、まあこの辺ものちのち嫌われる一因だったのかなと。

そういったヴェルディらしさを、どうやって身につけ、どうやって伸ばしていくかということを、歴代の指導者達が語っていきます。

私が好きなエピソードは、川勝がジュニアユースのセレクションで、明らかに初心者で下手なんだけど、楽しそうに大声出して元気にプレーしてる子を、何百人の中から選ぶ話。この子凄い良い子で、練習熱心だわ、雑用は進んでやるわ、メシのときは中心になってるわで、川勝は、巧いからと天狗になってる子達に、初心を思い出させるために入れたそうなんですが、チームの雰囲気が見事変わったそうです。

でもその子、やっぱり下手なんで、練習のたびに凹んで泣いてたっていうんで、ホント偉い。うるっときちゃいましたね。

 

ヴェルディの凋落は、読売グループの撤退が大きかったんですが、この本では日本初のクラブチームとして先鋭化して、それをアイデンティティにしていたものの、いつしかクラブチームが当たり前になり、外に向いていた矛先が自分達へ向っていったのではと分析しています。

ガンバの立ち上げに関わった人の話が出てくるんですが、ガンバは代表や世界といったことをクラブの先にあるものとして考えていたが、ヴェルディヴェルディのことしか考えていないんじゃないか、と語ってもいます。

確かに森本以外最近のA代表にいませんからね。まあ閉鎖性と良き伝統は表裏一体みたいなもんなんで、それはそれでいいんじゃないかとも思いますが。

でも、このクラブには、サッカー純度の高い、生意気な子がいっぱい集まってるんだなと思うと、潰れてほしくないなと思います。

この本は2011年に出版されてるんですが、冒頭の中島翔哉もチラッと出てきます。その彼の移籍コメントを引用します。

中島翔哉選手コメント
「この度、FC東京に移籍することを決めました。
今までヴェルディで教わってきた、観ている人が楽しいサッカーを新たなチームで表現するのが楽しみです。
ヴェルディに関わるすべての人が幸せになるようなプレーをしていきたいと思います。
僕を育ててきてくれたすべての人たちには感謝しています。
またヴェルディの皆とサッカーができることを楽しみにしています。
今まで応援ありがとうございました」

泣ける。ヴェルディは、今ヤスのせいで北Q化が進み、この本に出てきた人はコーチングスタッフに全くいませんでした。ユース以下では見かけましたが…。彼の愛したヴェルディは、この先どうなっていくんでしょう。